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青薔薇が花開く時
ああ、今日も閲覧数がちっとも増えていない。二十一歳の浅田涼音は深くため息をついた。
小説投稿SNS“スターライツ”に応募した、自分の初の長編小説『悪役令嬢は婚約破棄してスローライフを頑張ります!』。流行の悪役令嬢要素、みんなが大好き婚約破棄にざまぁ要素、それからスローライフ。それらをいっぱい詰め込んで人気に乗っかったつもりであったのに、何故かランキングに昇るのは涼音以外の誰かの小説ばかり。何故自分の作品は読まれないのか。確かに表紙を上手に描く画力ないし、目立たない作品なのかもしれない。でも、たまに閲覧数がついても、すぐにブラウザバックされてしまっているのが見えているのである(このサイトでは、1P読まれるごとにPV1がつくので、大体何Pまで読まれたのかがすぐ分かる仕様なのだ)。
十万文字。十万文字も書いたのに、何で最初の数千文字程度でみんな読むのをやめてしまうのだろう。
感想が一切ないので、何が良くて何がいけないのかがさっぱりわからない。このサイトではコンテストも多く開催されているし、出版社からの拾い上げも多いと聞く。あわよくば自分も書籍化を、と思って声がかからないか待っているのに、そちらも当然のように梨の礫である。
――やっぱり、積極的に感想求めに行かないとダメかな!
涼音は動くことにした。宣伝掲示板に宣伝を投稿するだけではやはり足らないのだ。なんせみんなが毎日大量の宣伝を投下するので、いくら涼音が見るたび自分の宣伝を投稿しても流れてしまうのである。全く成果がないとは言わないが、成果らしい成果は数字に表れてこない。
だが、これが感想がついている作品ならどうか。“面白い!”という感想が一つでもあれば、それにつられてクリックしてくれる人が増えるのではないか。
ゆえに、涼音は交流トピックスに積極的に自分専用の掲示板を立てていくことにしたのである。
――ていっても、怖い意見が来たら嫌だし!褒め言葉だけ貰いたいな。やっぱりモチベ上げたいもんね!
『私の作品読んでください!最後まで読んでください!』
『私の作品に感想ください!ポジティブ意見待ってます!』
『私の作品に意見をくれる人を待ってます。長所を伸ばしたいのでいいところを教えてください!』
『あまりメンタル強くないので、ポジティブな意見だけ欲しいです。怖い意見はご遠慮ください!』
新しい掲示板も、立てたら立てた端から流れていってしまう。涼音はひたすら自分の掲示板が流れるたび、新規投稿するということを繰り返した。少しでも、自分の掲示板がみんなの目に留まってくれるように。自分に感想をくれる人が増えることを願って。
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