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〝俺、お前のこと本当無理なんだけど〟
そう突き放したのは会の終盤、ジョッキを片手にカガヤが俺の隣にやってきた時のことだった。
酔いが進み周りがヒートアップしていく中、俺は同じチームの後輩とちびちびと飲んでいた。こういう飲み会は会場の隅でやり過ごすに限る。今回もその作戦でうまく乗り切れそうだったのに、せっかく張っていた厚い暗幕を引き裂くようにしてやってきたのがカガヤだった。
彼女は俺と後輩の間に割り込んできたかと思うと、熱苦しいトークを三十分ほど繰り広げた。最近のエンターテイメントはどうだの、ユーザーの動向はどうだの……。次に開発するスマートフォンゲームアプリをみんなで成功させようと、目を輝かせて語っていた。
カガヤは今回、はじめてプロジェクトリーダーを担うという。
その気合いの入りようが、俺の目には鬱陶しく映っていた。
「セノくんってさー、私にもだけど、女子全般に対応悪いよね。もしかして女嫌い? でも、人のことお前って呼ぶのはよろしくないよぉ」
ち、と我慢していた舌打ちが出た。
いちいちうるさい。
「はいはい、ご忠告ありがとうございます。以後気をつけますので」
「もー、なんでセノくんってそうなの? そういうこと言ってると敵ばっか作るよ」
「そうですね、注意します」
ひたすらあしらい続けていると、カガヤはふと、夜空を見上げた。
「あー、やだやだ。なんていうか、同族嫌悪だわ」
……同族?
そのワードに、引っ掛かりを感じた。
カガヤの表情を盗み見ようとしたけれど、それは叶わず、彼女はさっさと道の先へと走っていった。
そして、コインランドリーの横の自販機で飲み物を買い始める。俺が追いついた頃には二本、お茶のペットボトルを抱えていた。その片方を差し出されたけれど、奢られる筋合いはないので拒否する。
カガヤは変わらず、笑みを浮かべていた。
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