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おしゃべりなアンドロイド
ギュルン、ダダダダ――!
八年を供にした相棒の、それが断末魔だった。
中古だったし、大戦の後遺症か、メンテナンスをしようにも街は消滅するばかりで必要な時にまともな修理に出せないことも多かったし、八年も乗れたのは奇跡だ。女の一人旅をよく支えてくれた。がんばったよ、相棒……。
本当ならば、故障したホバーバイクから投げ出されながらも、ミシィは感謝とねぎらいの言葉を口にするべきだったかもしれない。幸い投げ出されたのは柔らかな砂が積もった場所。怪我もなく、痛みすら軽いものだったのだから。しかし、砂を払い落としながら、立ち上がったミシィは、石の焦げたような匂いのするホバーバイクに叫んでいた。
「こんなところで止まるな!!」
ミシィは罵り、だんだんと砂地を蹴った。少し離れたところに転がっている大きな肩提げ鞄を拾い上げ、バサバサと砂を払う。がま口状の口金はしっかりと閉じていた。どうやら中身はぶちまけていないらしい。胸がへこみそうなほど息を吐く。膝から力が抜け、ぺたりと地面に尻をつけた。
「どーすんだよ、こんなところでぇ……」
辺りを見回しても、街の影ひとつない。建物らしきものもない。まばらに生えた低木が今にも石化し、砂となりそうな様子をたたえている。少し遠くに、茨を編んだような低木が列を成している場所がある。旧街道のしるしだ。迂遠な旧街道を逸れて、近道しようとしたのが悪かったのだろうか。いや、でも、バイクが妙な音を出していたから、少しでも早く街に着きたくて、ミシィは街道を離れたのだ。結局、まめに修理できなかった自分に原因があるのだとは、分かっている。寿命が近いことも予感していた。
「しかし何も、こんな砂漠越えの真っ最中……。あぁ……」
ミシィはやや赤っぽい砂色の短い髪をかき上げた。喉の渇きを覚えて白煙をちろちろとのぼらせているバイクから水の入ったボトルを外す。その刺激がまずかったのだろうか、ボフンという異音とともに、黒煙が辺りに立ちこめる。
「げ!!」
ミシィは水を飲むことも忘れ、ダダダっとホバーバイクから離れた。
背後から爆発音がした。白い機体がオレンジ色の閃光を放ち、煙がもうもうと上がる。爆発の直前、砂に足を取られ転んだミシィは、あおむけに倒れたまま、ただ呆然と相棒の死を見届けることしかできなかった。
「これはまずいよね……ってうおぉ! なに、人!?」
口を開けて惨状を眺めていたミシィは、何か人の形をしたものが空から降ってくるのを見た。爆風に巻き上げられたのだろうか、白っぽいモノが落ちてくる。頭と、腕と足があるようだった。逃げるミシィのすぐ横に、それは着地した。ミシィと同じくらいの大きさの何かは、人の形をしているが、ヒトではなかった。
「アンドロイド……?」
視線の先にあるのは、白くツルリとした素体を剥き出しにした、機械人形だった。
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