陽介くんと僕の1時間

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 そしてその1分間。  僕は1秒も損をしたくなくて、喘いでいつつも心の中では秒数をカウントしていた。  多分、それは陽介くんも同じだったんだろう。  僕のカウントが「60」になった同じタイミングで  ちゅるっ  と、陽介くんの口から僕の指が離された。  僕を掴んでいた陽介くんの手も離され、人差し指が完全に解放される。  「ふう……。」  寝起きで舌や唇を動かした所為か陽介くんは気怠い息をついた。  それほど、1分という短い時間僕の指を愛してくれたのかと思うと心が熱くなる。  「あ、ありがとう陽介くん。」  僕も彼と同じような息をしながらお礼を言うと、彼は首を振ってスマホを掴みベッドから降りた。  すうっと……陽介くんの肉体が(かすみ)のような僕をすり抜ける。  それからテーブルに置いていたいつもの鞄を拾い上げて扉の前に立つまで一切僕の方を向かず、こう言った。  「俺はこんな野郎だからお前の欲を満たしてやる事は出来ないし、俺のやり方をお前に押し付ける気はない。だからさっきのは恋だとか愛だとかで片付けないでほしい。」  「……?」  彼の意図が掴めず、扉前で靴を履く彼の背中を見つめる。  そんな僕の気配が分かったのか、陽介くんはその体勢のまま  「遊びだ、遊び。」  と明るい声で言った。
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