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顔は見てないけど、陽介くんが怒ってないのは声色で分かる。僕のこのやり取りが楽しいから、職場や恋人の家からも遠い場所に位置してる僕の同居に付き合ってくれているんだ。
「お前がそんな態度とるならいいものやんねーぞ。」
陽介くんはそう言いながら紙袋の中身を取り出す音を立てる。
「いいものって何?」
僕は相変わらず興味ないような声を出したものの内心はワクワクしていた。
優しい陽介くんは時々僕に便利なプレゼントをくれるからだ。今僕がゲームや動画に没頭出来るのも、本人が全く利用しないタブレット端末とネット使い放題の契約を僕の為にしてくれたからで、その点は感謝しなければならない。
紙袋の中身をテーブルに置く音がゴトンと大きく、思わず僕はテーブルの方へ目を向けた。
「ほら、この前コーヒーの話しただろ?」
「えっと、陽介くんコーヒー苦手だったんだけど、恋人の部屋で飲んだコーヒーだけはめちゃくちゃ美味しくて感動したっていう話の事?」
「そうそう。香炉ならお前も香りが楽しめると思ってさっき買ってきたんだ。」
「それで今日は帰ってくるのちょっと遅かったの?」
「だって教えてもらった雑貨屋、開くのおせーんだもん。これでも急いで帰ってきたんだからな!」
起き上がって陽介くんの隣に座り、火を付けた平たい蝋燭を香炉の穴に入れる陽介くんの表情を眺める。
「……陽介くん嬉しそうだね。」
僕がそう言うと、陽介くんの口角がキュッと上がってキラキラと目も輝かせていた。
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