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「こんなに美味いコーヒー飲んだの初めてだったからさ、お前とこの香りを共有したいって思ったんだ。豆もアイツの家で挽いてきたからすぐ香りが出てくるはず。」
そう言いながら陽介くんは香炉の窪みに多角形の粒をザラザラと盛っていく。
なるほど。まだ温まってないのに既にコーヒーの香りがしてきた。
「テーブルがガタつくから真ん中に置いといて。」
「はいはい。キャンドルは6時間くらい燃えるけどどうする?」
「……陽介くんが仕事行く時に消して。」
「分かった。」
僕の言う事に頷いた陽介くんは、押入れ近くに置いているベッドの方へ向かう。
彼から立ち昇っていた煙草の臭いもそれと同時に僕から遠ざかっていった。
「な、いい香りするだろ?」
本当に気に入ったのか、陽介くんはベッドに寝転がりながら僕に同意を求めてくる。
「うん、僕の為にありがとう。」
僕は陽介くんの方をチラ見して御礼を言うとまた寝転がり、足をベッドの方向に向けてうつ伏せ足ブラブラを始めた。
「……今日は11時ちょっと過ぎに出るから。」
吐息まじりに陽介くんがちょっぴり嬉しい事を言ってくれる。
「それって今日10時の約束に遅刻したから?」
「そうだよ。嬉しいだろ?」
「ちっとも。」
「ちょっ!素直になれよばーか。」
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