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「……。」
そうだね、と心の中で呟きながらゲーム画面を閉じて人差し指をタブレット画面から離した。
そして陽介くんからバレないようにホーム画面の時計アイコンを見つめる。
陽介くんは基本忙しい。12時から19時まで仕事をして、20時までに恋人の家に行き9時半近くまで過ごした後で僕の待つ家に戻る。それも10時から11時という1時間だけだ。
風呂も食事も恋人の家で済ませているから、つまらないこの部屋ではベッドに横たわってうたた寝するくらいしかする事がない。現に僕と喋るのは前半の30分程度で残りは仮眠に当てられる。
「この香炉さ、恋人のアイデアでしょ。」
僕が陽介くんに話しかけると
「なんで分かったんだよ?!」
と彼は少しビックリしていた。
「分かるよ。こんな女性らしい小物のアイデアなんか陽介くんの恋人くらいしか思いつかないだろうし。」
「確かに。俺じゃ思い付かなかった。普通にコーヒー淹れたんじゃ良さがお前に伝わらないと思ったし。その点アイツは頭が回るから。」
「それって僕の事を恋人に喋ったって意味?」
「まさか。『男友達がいる』なんて知ったら嫉妬に狂うよアイツ。」
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