陽介くんと僕の1時間

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 僕が住んでいるのは、小さな町工場が密集している地域に建つ築40年以上のボロアパート。  そんな時期に建てられた事もあって風呂も無いしトイレも決して綺麗とは言えない。  部屋の中は昼間でも暗く照明を点けないと生活出来ない。そんな家だから部屋全体がカビ臭くてこんな場所に住むなんて変わり者は安い家賃目当てで契約する独身男性か、僕くらいなもんだ。  古い畳敷き 1Kの間取り。僕の部屋の中は至ってシンプルだ。  北側には昭和感溢れる押入れの引き戸があり、そこには僕の大事なものをほんの少し入れてある。  部屋の中には畳の部屋には似合わないパイプの安物シングルベッドとテーブル。そのテーブルってやつも安い折り畳み式だから重たいものを置くと凸凹した畳の所為(せい)で傾いてしまうんで滅多に使わない。  壁掛けの時計もテレビもソファもクッションも無いから実にシンプル。  「シンプル」と言えば聞こえは良いけど、要は「何もないつまんない部屋」って意味になるよね。  その代わりに僕はタブレット端末を持っていて、畳の上に寝転びながらネットで動画を観たりスマホゲームをしたりして楽しんでいる。  薄暗くて面白味の無い部屋の中でも、人差し指を液晶画面に滑らせれば世界が一瞬にして広がり僕を飽きさせない。  このアパートが建てられたばかりの時代には想像出来ないくらい、インターネット社会となった今の時代はとても快適で本当に良かったと僕は思う。
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