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派手に転ぶ既の所で咄嗟に手を掴んでやると、現実に戻った莉沙は俺の顔を見て不満げな顔をした。
「って何で助けてくれたのが椿なのー! ここは王子様が登場するところでしょ! お怪我はありませんか、お嬢さん。とかなんとか言われちゃってえええ!」
莉沙が俺の腕をバンバン叩いてくる。痛い。やめろ。
「妄想乙。そんな簡単に事が運ぶかよ。漫画じゃあるまいし」
「椿つまんない。私はお母さんとお父さんみたいな運命の出会いをするって決めてるんだから」
父さんと母さんの出会いは、なかなかに衝撃的だった。
それと、しっかり者の母親に昔は莉沙と同じ妄想癖があったことも。
「そういや、明日からだっけ」
「そうそう! だから今夜はそっちのお祝いもするってお父さん言ってた! 楽しみだね!」
「俺はちょっと……大分、恥ずかしいけどな……」
父さんと同じ会社だった母さんは結婚する少し前に退職し、暫くは専業主婦だったらしいが、今はちょっとした有名人だったりする。
「菫ちゃんと柊ちゃん、それに愛花さんとジェイさん、それに萌依ちゃんもくるって。よかったね、椿い」
莉沙が肘で俺の脇腹をニヤニヤとした顔でつついてくる。ウザい。
萌依、というのは愛花さんとジェイさんの愛娘で、俺たちの2つ年上の幼なじみの女の子なのだが「マジ天使!」と叫びたくなるほどの美少女なのだ。ちなみに俺の初恋の人でもある。ただ性格がかなりキツイのがたまにキズ。俺の初恋は儚く散った。
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