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翌日、夕飯が出来上がる頃を見計らって缶ビール片手にやって来た菫さんに、昼間加藤さんに言われた事を相談してみた。
「まあでも葵にその気がなきゃ問題ないんじゃない? お、今日は煮豚か」
「そうなんですが……何だか焦ってしまって」
「何を焦ることがあるのよ。流石にもう色々済ませたんでしょ? それに莉緒ちゃんは葵の奥さんじゃん。最強ポジじゃん」
「う、まあ……はい。それですよ。私は自分の立ち位置に胡座をかいているのでは……」
菫さんは缶ビールのプルタブを慣れた手つきで上げ「莉緒ちゃんさ、そういう気持ち、葵に言ったことある?」と聞いてきた。
「……ないですね」
「嫉妬とか、独占欲とか、普段から丸出しにしてるのはウザいけどさ、なんにも言われないのも寂しいと思うんだよね」
「そういうものでしょうか……」
「そういうもんなのよ。面倒くさいけど」
そう言って菫さんは缶ビールを一気に呷った。
「ま、莉緒ちゃんが嫉妬してるって言ったら葵は確実に喜ぶから。煮豚、柊ちゃんに少し持っていってもいい?」
「どうぞ。既に別に用意してありますので」
「やった! 毎度ご馳走様。じゃ、上手くやるのよ」
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