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1.山崎葵、お見合いするってよ
「莉緒、今まで楽しかったよ」
「え? 山崎さん? どこへ行くんですか、そんな恥ずかしい衣装を着て」
山崎葵は白いスーツで白い馬に乗って、私を見下ろしている。これが本当の白馬の王子様か。
いや、そうではない。
今、彼はなんと言った?
〝今まで〟楽しかった?
「俺に釣り合う女に出会ってしまったんだ。だから莉緒とは今日限りだ」
「は? ちょっと待ってください! 山崎さん!」
「さらばだ!」
私の静止の声も聞かずに、山崎さんはくるりと身をひるがえし、パカラパカラと蹄の音を立て、私から遠ざかっていく。
「待って、待ってください!」
私は白馬を追いかける。
だが、馬に追いつけるはずもなく、その距離はどんどん離れていく。
まるでふたりの心の距離のように。
どうしてこうなってしまったのか。
私たちは上手くいっていたはずだ。
どうして――。
「あなたには葵さんの彼女は務まらないわ」
突然現れたのは、やはり白馬に乗った美女だった。
「あ、あなたは……」
その美女を私は知っている。
彼女は――。
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