368人が本棚に入れています
本棚に追加
……ピピ、ピピピピ、ピピピピ!
「……はっ!」
頭の上で目覚ましが鳴っている。
「…………」
ということは今のは夢だ。
なんという夢を見てしまったのだろう。私は慌てて目覚ましを止め、それから右を向いた。
そこには絶世の美男子が静かな寝息をたてて眠っている。
私はほっと安堵の息を吐き、それからじっとその寝顔を見た。
彼は山崎葵。
クソ真面目な私の人生で、初めて出来た彼氏だ。
付き合い始めたのは去年の夏の終わり。
それから丁度1年が経とうとしている。
「……ん」
綺麗な長い睫毛が震え、その双眼が薄く開かれた。
「おはよ……莉緒」
「おはようございます」
いつまでも悪夢を引きずっている場合ではない。今日も私たちには仕事がある。
朝食を作るべく、無駄に広いキングサイズのベッドから起き上がろうとすると、右の手首を引っ張られた。
「わ!」
「もうちょっと寝ててもいいだろ」
「何言ってるんですか。もう朝食の支度をしないと」
「あー……じゃあ、少しだけ」
そう言って顔を近づけてきたので、私は両手でその胸を押し返した。
「おまえな」
「朝からそんな破廉恥なこと出来ませんから! ほら、起きますよ!」
「くそ真面目め」
最初のコメントを投稿しよう!