悪役令嬢たちのお茶会

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悪役令嬢たちのお茶会

「……様、起きて下さい。お客様」 「ん……」  目を開けると、そこはどこかの屋敷裏であった。  目の前には、燕尾服の若い男性が立っており、心配そうに顔を覗き込んでいたのだった。 「お客様、この様なところで休んでいて、どこかお身体の調子が悪いのでしょうか?」  どうやら、わたしは木に寄り掛かって寝ていたようだ。  辺りには草木と甘い花の香りが漂っていた。 「よければ、休めるように個室を用意しますが……」 「だ、大丈夫です。多分……」  心配を掛けないように立ち上がるが、スカートの裾を踏んで転びそうになる。 「わわわ……」  男性の手を借りて体勢を整えると、ふと気づく。 (あれ、ロングスカートなんて履いていたっけ?)  今日の服装を思い返すと、パリッとした白いブラウスを着て、前日にアイロンをかけた黒いズボンを履いていたはずだ。  社内規定でロングスカートの着用は禁止されており、わたし自身も動きやすさ重視で、仕事中はいつもズボン姿であった。  そのまま着替えずに帰ってきたので、服装はズボンと白いブラウスのはずだったが――。 (えっ……)  自分の身体を見下ろすと、中世風のデザインをした薄紫色のロングドレスを着ており、足元は同じ色のヒールを履いていた。  まるで、どこかの貴族令嬢のような姿に、わたしの思考は固まったのだった。 「お客様?」 「あ……。すみません。やっぱり、個室をお借りしてもいいですか?」 「わかりました。こちらへどうぞ」  男性の後に続くと、庭園の側の大きな屋敷の中に入って行く。  階段を昇って二階に行くと、ホテルのような豪華な一室に案内されたのだった。 「こちらの部屋をお使い下さい」 「ありがとうございます」  男性が部屋から出て行くと、すぐに洗面室に入っていく。  洗面台に備え付けの鏡に向かうと、そこには見知らぬ女性が写っていたのだった。
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