悪役令嬢たちのお茶会

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「え……。誰?」  鏡に写っていたのは、カナリアの様な金髪を腰まで伸ばした温顔の女性であった。  わたしが瞬きをすると、鏡の中の温顔の女性も空色の両目で瞬きを繰り返したのだった。 「もしかして……わたし?」  顔を触れると、わたしより歳下と思しき温顔の女性も顔に触れた。  月並みではあるが、頬を掴んで軽く引っ張ると痛みが走った。  やはり、夢ではないらしい。 「どういうことなの……?」  誰も答える者がいない呟きを溢すと、洗面所の扉がノックされたのだった。 「あ、はい!」  鏡を見ると、特におかしなところはなかったが、念のため、カナリア色の金髪を手で整えて、ドレスに乱れがないか確認する。  そうして、洗面室から出ると、先程とは違う若い男性が立っていたのだった。 「カナリア様、お姿が見えないと思ったら、こちらで休まれていたんですね」 「は、はあ……」  どうやら、この身体の持ち主はカナリアという名前らしい。 (ん……。カナリア?)  確か、『カナリアのさえずり』のヒロインはカナリアという名前であった。  原作では、カナリア色の金髪だったことから、カナリアという名前を名付けられたという設定になっていた。  空色の瞳に、綺麗な声も合わせて、鳥のカナリアにそっくりなことから、一部の登場人物から「小鳥」の愛称で呼ばれていた。  そして、この身体の女性もカナリア色の金髪と空色の瞳であった。  声も可愛い方だと思う。  と、いうことはーー。 (もしかして、カナリアに転生しちゃった……?)  これこそ、昨今流行りの異世界に転生する話と同じ。  事故に遭って、目が覚めると、小説やゲームなどの登場人物になっているという……。 「具合が悪いとのことでしたが、もし辛い様ならこのまま屋敷に戻られますか?」  カナリアのお付きと思しき男性の言葉に、わたしは首を振った。 「だ、大丈夫です! 本当に! なんでも!」 「そうですか? それならいいのですが……」  男性は安心した様に肩の力を抜いたようだった。  もし、わたしが転生したのが、本当に『カナリアのさえずり』に登場するヒロインのカナリアだとしたら、この男性は誰なのだろう。  『カナリア』や『マチルダ』に登場していた男性キャラクターとは、全く特徴が合わない。  作中に登場していないのか、それともただの名もなきモブキャラクターなのか。
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