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「それより、お茶会って言ってましたよね」
「はい。貴族の令嬢が集まるという茶会に招待されてやって来ました。
途中でお姿が見えなくなって探していたところ、この部屋で休んでいるとお聞きしまして」
「そうだったんですね。あはははは……」
乾いた笑いを漏らすと、執事は訝しげにじっと見つめてきた。
「やはり、どこか調子が悪いのでは……」
「だ、大丈夫です! お茶会でしたよね。すぐに行きます!」
「そうですか。では、庭園にご案内します」
男性のあとに続いて部屋を出ると、お茶会の会場という庭園に向かったのだった。
(こ、これは――!?)
庭園に入ると、既にお茶会は始まっており、あちこちの丸テーブルでお茶とお菓子を片手に、若い女性たちが話に花を咲かせていた。
問題はそこじゃない。なぜなら、お茶会に参加していたのが――。
(縦巻きロールの集団!? )
どのお茶会に参加している人の大半が、縦巻きロールの若い女性。
それ以外の髪型もいるが、それでもお茶会に参加している女性の九割が縦巻きロールであった。
(どこかで見たことがある顔ばかり……)
男性が庭園にいた給仕らしき男性に声を掛けて、テーブルまで案内してもらいながら、参加者の顔をチラ見する。
どのテーブルにも、どこかで見たことがある色とりどりの縦巻きロールが座っていたのだった。
「この間、王子に近づく卑しい女を――」
「わたくしは汚らしい倉庫に閉じ込めたのよ。わたくしの婚約者の色目を使っていて……」
「それなら、異なる世界からデネスト王国に現れて、わたしから聖女の座を奪った女に、こんなことをしてやったのよ……」
聞いたことがある国名が聞こえてきて、わたしは閃く。
(デネスト王国の聖女の座を奪われたって……もしかして、あの作品に登場する悪役令嬢!?)
デネスト王国という国に、異世界からヒロインがやってきて、聖女の座を奪われた令嬢がヒロインを苛め抜く話――。
タイトルは思い出せないが、確か、書店の悪役令嬢コーナーに並んでいた本の中にあった気がする。
( ということは、もしかして、ここにいる縦巻きロールの集団って……)
会場を見渡して間違いなかった。
ここにいる女性たちは、書店の悪役令嬢コーナーに並んでいた悪役令嬢たちで間違いない。
それも悪役令嬢から脱却する前の――悪役令嬢だった頃の。
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