1粒目 告白

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1粒目 告白

「あのね、春雪(はるき)。私、好きになってしまったかも知れないの」  親友の冬雪は、開口一番にそう言った。  その言葉は恥じらいながらも重く、真剣(ほんしん)なのだと伝わってくる。  けれどその告白には、肝心の主語が抜けていた。 「それって……誰のこと?」 「あっ……。あの、その……同じ部活動の、先輩……なの」  ウチの指摘に慌て、それでも想い人について語る姿は、見ていてとても初々しい。  その〝想い人〟が、ウチのことでないのだとしても――幸せそうにその部活の『先輩』について話す冬雪の表情は、見ていて微笑ましかった。 「でも、でもね。告白しようか迷っているの」 「迷う? どうして?」 「だってきっと、先輩のことを困らせてしまうわ。そんな迷惑も掛けたくないの。でも、先輩への気持ちも、整理がつけられなくて……」  どうしたらいいかしら、と心情を吐露していく冬雪。 「ごめんなさい。こんなこと、話せるのは春雪しかできないと思ったの……!」  困らせてごめんなさい、と再三謝る親友の肩をそっと抱き寄せると、優しく頭を撫でてあげる。指の隙間を通り抜ける柔らかい髪に、シトラスの香りがそっと鼻先を擽る。 「大丈夫」  ずっと見てきたから、判る。だから、冬雪が謝る必要なんて何一つない。 「大丈夫だよ、冬雪。ウチも、好きな人がいるから冬雪の気持ちは分かるよ。だから……ウチに、ウチだけに話してくれてありがとう」  その気持ちは、同性に向けるにはまだ若く幼い。  言葉にすることも、受け入れることも、伝えることもそう簡単にはできはしない。  ずっとずっと何年も、冬雪より先に経験しているウチだから、解る。 「ウチが、先輩と一緒になれるよう取り計らってあげる」  冬雪に哀しい想いなんてさせない。させたくない。  だって、こんなに優しくて可愛くて、誰よりも一番素敵なんだもの。
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