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【 第1話: ここはどこだ…… 】
「こ、ここは……、どこだ……」
俺は、病院のベッドの上で目が覚めた。
瞼を開くと、病室のオフホワイトの天井が近くに見える。
「先生! 『五十嵐』さんが目を覚ましました!」
「ん、そうか。すぐに行く!」
口には酸素マスクが取り付けられ、いくつかの点滴らしきものが俺の体に繋がれている。
そして、なぜか頭部と腹部に激しい痛みを感じる。
医者と看護師は、俺が目覚めたことで、とても驚いている様子だ。
「五十嵐さん、大丈夫ですか?」
右側から若い眼鏡をかけた、白衣を着た先生らしき人の顔が視界に入る。
この人は何か事情を知っていそうだ。
「先生……、ここは、どこですか……?」
俺は、痛む頭とお腹に手をやり、そう先生に聞いてみた。
「ここは、病院ですよ。五十嵐さん」
「病院……?」
「はい。五十嵐さんは、頭部と腹部を怪我されて、ここへ運ばれて来たんですよ。18時間もの大手術でしたが、よく耐えてくれましたね」
「18時間も……?」
その先生は、そんな驚くことを俺に言う。
「そうですよ。五十嵐さんは、奇跡的に命が助かったんですよ」
「奇跡的に……、命が……? コホンコホン、うぅっ……」
しゃべるとなぜか咳き込み、胸が痛む。
「まだ無理に話さない方がいい。肺にも達していたので、しばらくはお話にならないで下さい」
「うぅぅ……」
後で先生に聞いたことだが、どうも俺は、頭部を硬いもので殴られ、腹部と胸部を鋭利な刃物で複数個所、何箇所も刺されていたとのことだった。
なぜそんなことになってしまったのか、俺自身、全く記憶がない……。
先生は、頭部を損傷したことにより、一時的にその部分の記憶を失った可能性があるとは言っていたが……。
なぜ俺は、こんなことになってしまったんだ……。
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