あした世界が終わっても

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「どうしたの? 美樹!」 「お姉ちゃん、今晩泊めて」 「は? なに、喧嘩でもしたの?」 「うん、まぁ。そんなとこ」  帰れなかった。  こんな顔で帰ったら、一発でバレてしまうから。病状も、私が躊躇している理由さえも。  怒るだろうか、悲しむだろうか。もしかしたら自分を責めるかもしれない。  どうしよ。。もう会えないよ。 「美樹⁉︎ 何があったの? 美樹を泣かせるなんて‼︎」 「え、違っ」  いつの間にか泣いていたようで、何故かお姉ちゃんが怒っている。 「いいよ、謝って迎えに来るまで、ずっとここにいていいから!」  そっか、喧嘩して泣いてると思ってるのか。 「ありがとう」  その後は一緒にご飯を作って食べた。 「そういえば、綾さんは?」 「仕事! いつ帰ってくるかわかんない。まぁ、いつものことだから」 「寂しくは、ないの?」 「・・ないね。あんまり一緒にいると、身が持たない」 「はぁ、そうなの」 「ん? やっ、違うよ、そうじゃなくて、振り回されるっていう意味だよ!」  あたふたと訂正されてもなぁ。  まぁ、どちらにせよ幸せそうだ。  その後は、やることもなくてテレビを見ていた。  ソフトボールの試合をやっていた。こういう大きな大会でもなければ、テレビで中継されることもない競技だ。  投げている若いピッチャー、髪長いなぁ。ボールの速さよりも、そんなことが気になった。  昔はソフト部の子なんて、みんなショートだったのに。  私も、そうだった。伸ばし始めたのは卒業してからだ。  そう、髪は切っても伸びる。たとえ抜けてもいつかは生えてくる。お洒落なウィッグだってある。わかってる。頭では理解している。  それでも……  インターフォンが鳴った。  綾さんが帰ってきたのかと思ったけれど、やって来たのは祥子さんだった。
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