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あした世界が終わっても
診察室に入って、主治医の顔を見た瞬間に嫌な予感がした。
あぁ、医者はポーカーフェイスも必要なスキルなんだなぁと、ぼんやり考えていた。
案の定、検査結果を見て、化学療法を勧められた。
今は、入院しなくても外来でも出来るからと。
とにかく、まず血液化学療法科にカルテを回すから、この後受診するように言われた。
なかなかスピーディな対応じゃないか。考える時間を与えないためか?なんて邪推してしまう。
血化でも、結果について同じような説明を受けたのち、化学療法について具体的な説明があった。
時間や期間、何クール行うか。
効果や考えられる副作用など。
やはり、入院はせずに外来で出来るらしいことも。
一通り説明を聞いた後。
「少し考えさせてください」と言うと。
「えっ……あぁ、もちろん」
明らかに治療を受ける前提で話していた先生は、少し狼狽えていたように思う。
病院を出たのは、お昼を少し過ぎた頃だった。
病気になった時に一通り調べたし、入院していた時には、同室のおばちゃん達に詳しく聞いていたから。
--それはもう、経験者は語るってやつで--
吐き気の辛さはもちろん、排便障害なんて便秘も下痢もどちらも相当辛いんだとか。
まぁでも、そういうのは症状に対応する薬もあるし、耐えることは出来る。と思う。
客観的にみれば、治療を受ける方が良いに決まってる。
けれど……
どこをどう歩いたのか定かではないが、辿り着いたのは真由美さんが待つ部屋ではなく、お姉ちゃんが住む部屋だった。
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