4.俺の仕事はどないなるねん

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4.俺の仕事はどないなるねん

 翌朝、俺がコンビニで3人分の朝メシ買うて戻ったら、マスターが言うんや。  「今日からこの娘にホールのことやってもらうで」  「え?2人もいらんのと…」  「そや。2人もいらんわな。そやさかい、英治、お前はクビや」  「えーーーーーーっ!」  「ほんで、あの部屋は社宅やからな、出てってもらうでー」  「ええーーーっっ!!そんなーーー!!!」  俺は今この瞬間に、職ナシ、住むとこナシになったらしい。  ユカはしきりに「すんません・・すんません…」と繰り返しているが。  あまりのショックに眼ぇ見開いてボーとしてたら、  「まあ、住むとこは、ほれ、ワシの自宅の裏側に小さなアパートあるやろ?あそこに住んでもええから。仕事見つかったら、ちゃんと家賃払うてや」  ああ、なんかボロいアパートあったな。あれか。ほんでも住めるんやったら助かるわ。  「はぁ……」  「この娘が仕事覚えるまでは、店に来て手伝ってくれたら小遣いぐらいやるし」  「はぁ……」  「今は世の中景気がええさかい、何とかなるて」  けど、ここみたいに居心地のええとこは……みつからんやろなぁ……。  俺はマスターの自宅裏のアパートに引っ越した。  ぼろアパートの4.5畳の自分の城や。  階段の下やから、天井の隅がちょっと斜めに切れてるけど、自分の部屋、嬉しいなあ。  常連さんたちからテレビやらトースターも貰ったし(どれも使い古しのおさがりばっかしやけど)、とにかく自分専用のがあるねん。立派なもんや。ありがたいことや。  ユカは、あんまり人前には出たがらんかったけど、それでもアイツが来てからのほうが店は繁盛した。明らかに店が活気づいた。儲かるようになって、俺に小遣い渡しても楽勝やったやろう。  3ヶ月ほどたった頃、  「どや、仕事見つかったか?」マスターに聞かれた。  「いえ…まだ…」  「あのなぁ、常連の石川さんておるやろ?」  「あの、ベース弾いてはる人?」  「そやそや、あの人なあ、音楽雑誌の出版してはってな。お前、あのバンドに作詞してやったことがあったやろ?」  「ああ、そういえば……」あったかいな?  「近頃お前はどうしてるって聞かれたから、職安に日参してるていうたらな」  「え?あ、はぁ」俺はこの店に日参しとるがな。  「雑誌にコラムでも書いてみんか、て言うとったで」  「えっ!それ仕事っすか?なんぼか給料くれるんすか?」  「そらくれるやろ。なんぼかは聞いてへんけどな」  「やります!やります!」
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