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5.俺は働く人になった
てなことで、俺のライター稼業がはじまったのよ。
雑誌のコラムやら、チョロチョロした雑文を書かせてもらった。事務所で使い走りやら雑用もさせられてたけど。
文を書くのは案外俺に向いてたらしく、好評やった。
2年3年と過ぎる内に、だんだんちゃんとした記事を書かしてもらうようになって、前よりは収入が増えたんで、格安の家賃も払うてます。
漢字は得意やないけど、ワープロが書いてくれるしな。
ユカの方もすっかり仕事は覚えてるから、俺が教えることなんてもうない。
それでも、やっぱり裏にこもりがちで、あんまり誰とも親しく話したりはせんのやけど。
唯一の例外が俺やな。
正直に言うと、俺はユカがここに初めてきたときから好きやった。一目惚れていうやつやな。
そやから、仕事教えるのも丁寧に、優しいにて、気いつけてたし、普段の生活に便利な店とか、散歩にええ公園とかも案内してやったりしてたんや。
そのうち、一緒に散歩したり、たまには映画も見に行ったりできるようになった。
付き合ってるて言うてもよかったんやろか。ようわからんかった。
ユカはいつもうつむいて、なるべく人と眼もあわしたくないみたいな。心細そうな。実際ひとりで涙ぐんでるときもあったし。
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