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ハクの話。
一部始終を見ていたハクは、内心ため息を吐いていた。
『人間ってのはつくづくバカだ』
本来四十九日を過ぎた霊は、強制的に成仏させられる。だからその日も、黒都は一度、地縛霊になりかけたのだ。
だが彼の願いがそれを限界まで抑えていた。だから死神であるハクが手を加えることができたのだ。
その代わり、ハクは死神としての資質を疑われ、次の仕事から研修のし直しとなってしまった。
『あいつもとんだ嘘吐きだし』
またため息を吐いて、真白の目線から見た映像を見直す。
「――空の上で待ってる。真白、お前が天寿を全うするまで」
思い出すのは、最初に伝えた言葉だ。
『現世に留まったら輪廻から外れるって言ったろうに』
何故嘘を吐いたのか。俺にはよくわからなかった。
『お前らは、もう会うこともないのによ』
言ってから、ズキン、と胸の辺りに痛みが走った。よくわからず、首を傾げる。が、すぐ治まったから、気にするのをやめた。
『さて、そろそろ出るか』
その言葉と共に真白の身体からすっと抜け出す。瞬間身体にかかっていた重みは消えた。
ふと足元の真白を見れば、地面に転がり、眠っている。
――誰かが見つけてくれるだろ。
それ以上の面倒は見ることなく、彼から離れた。
遅れて聞こえてきた声に、一瞬引き戻される感覚だったが、すぐそれも消えた。
ただ少し、吹いた風に息苦しさを感じていた。
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