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オックスフォード大学、大講義室。
世界中から多くの優秀な学生が志を高くして学びにくる歴史ある学び舎であり、ケンブリッジ大学と並び英国が世界に誇る由緒正しき大学の一つである。
「『少し前までイギリスは親の職業が自分の所属を決めると言われていた。
だが1980年代に発生した大不況の原因が階級制度にあると考えたサッチャー首相は教育改革を中心とした大胆な改革を推し進めたのである。
これは後のブレア首相にも引き継がれ階級制度はイギリス社会に大きな変化を
もたらした…』」
「教授、サッチャー首相の政策は成功したのでしょうか?」
黒人の生徒の一人に柔らかな、諭すような声が答えた。
「まだ途中だよ、デニス。最後まで聞きなさい。あとそこ、おしゃべりはやめ
るようにね」
「なんか今日の教授、優しくない?」
赤毛の女子学生が隣のブロンドの友人に話しかける。
「思った。黙ってればイケメンなのにもったいないよね。普段は『勉強する気がないなら出ていけ!!』って鬼みたいに怒鳴り散らすし」
(え、あいつそんなこと言ってんの?)
別の女子学生が眉をひそめて話しているのを聞いた。
「あたしなんか、“化粧なんかやめろ!!お前程度の顔なんか多少ごまかしたところでかわりゃしねえよ!!“とか言われたわ」
(うわーそれ最悪)
容姿端麗な“教授”はまるで与えられた役をこなすかのように完璧に教授になりきっていた。
(なんだよトモのやつ。さぞ面倒な事かと思ってきてみれば…教授の仕事なん
てヤードの捜査に比べりゃ楽勝じゃねえか!!おまけに若い女子大生とはイチャれるし?)
ニヤつきそうになるのをなんとか抑えながら、こんないい思いをするならしばらく教授のままでいるのも悪くないな、と思った。
そんなことを思っているうちに、講義の終了をしらせるベルが鳴った。
「先生、この後の予定は?良かったら私たちと食堂で何か軽く食べませんか?」
数人の女子学生が集まってきた。心なしか頬を染めている。
喜んで、と頬を緩めそうになったときにスラックスのポケットに入れていた携帯が鳴った。
「ちょっと失礼」
「もしも―」
「俺だ。気色悪い声を出すな、和樹」
上条和樹の顔が真顔になった。
「今、大学の中庭に来てる。降りて来い」
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