1. 亡霊

11/28
前へ
/380ページ
次へ
半信半疑で言われた場所まで行くと、本当に双子の弟が中庭の芝生に立っていた。 「ったく何なんだよ。せっかく現役女子大生とオックスフォードの食堂(カンティーン)で何日かぶりにまともな飯にありつけると―」 「警察手帳よこせ」 「は?」 思わず耳を疑い、目の前の自分と瓜二つの男の顔をまじまじと見つめた。 次の瞬間、目から星が見えた。気持ちいいほどのストレートにもんどりうった。 「いいから、警察手帳だ!!お前、また他人の顔で色目使いやがって!!あとでこれの100万倍ぶん殴ってやるから覚悟しとけよ。だが今は俺がお前で、お前が俺なんだ。だから四の五の言わず、手帳をよこせ!!」 こいつが兄弟じゃなかったら傷害罪で逮捕してやるのに、と和樹は身体に流れる血を呪った。
/380ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加