1. 亡霊

14/28
前へ
/380ページ
次へ
その時、誰かが背後から息せき切って駆けてくる音が聞こえた。 「―間に合ったか」 「先輩!どこに行ってたんですか!」 「野暮用だって言ったろ。それより、例の3人の事情聴取今からなんだろ。始めるぞ」 呆気にとられている私とCHIKAさんをよそに、先輩はバウアーさんに早口の英語で指示をだしていた。 「一体どうなってるの?」 CHIKAさんが困惑した様子で呟いたのが聞こえた。 イギリスは人種の90%が白人だと言われているけれど、イギリスのいくつかある大都市では、世界中から様々な人が集まって暮らしている。ロンドンはそのうちのひとつ。 事務所とは別室のガラス張りの部屋で、一人一人、事情を聞かれることになった。 事情聴取用にあてがわれたのは、空調付きの小部屋だった。 私とCHIKAさんは部屋の隅にあるパイプ椅子に腰掛けてバウアーさんと智樹先輩が警察用の椅子に座るのを見ていた。 「ねえ、バウアーさんはわかるとしてどうして上条さんが座ってるの?あの人ただの大学教授よね?」 「は、はい。そのはずです…」 バウアーさんは部外者であるはずの先輩を追い出すどころか、仲良く談笑まではじめてしまっていた。
/380ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加