1. 亡霊

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一人目は事務弁護士のアシュトン・モリス。 褐色で黒い縮れ毛をした30代の男性で、出身はケンブリッジ。 長身で大人しそうな印象のビジネスマンだ。 「I…I’ m going to the City for the meeting of my client, Today… I bought coffee and bread in that shop…and then」 (わ、私は今日はシティでクライアントと打ち合わせがありましたので…そこの店でコーヒーとパンを買って、そして、その…) 「“シティ”ってロンドンの中心街の事ですよね?」 「ええ。金融街にロンドンの観光スポットが集中してるわね。私、レドンホールマーケットでショッピングに行ってきたのよ!良かったわ~」 バウアーさんの咳払いが聞こえ、私達は日本語での会話を中断した。 バウアーさんからいくつか簡単な質問をされたあと、モリスさんはほかの警官に伴われて退室していった。 「あの人じゃないと思うわ。気も弱そうだし、盗みをするようには思えない」 「私もそう思います。背は高いですけど」 「二人共、結論を出すのは残りの二人の容疑者を見てからにしろ」 先輩がぴしゃりと言って、私たちは黙った。
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