1. 亡霊

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続いて入ってきたのは東欧系の、浅黒い肌にドレッドヘアの陽気な20代半ばから後半の若い男の人だ。渋谷のストリート系ファッションの店員にいそうだ、と思った。 「Would I ask your name?」 (名前を聞いても?) 「Ream Willson. Showbiz Consultant.」 (リアム・ウィルソン。芸能コンサルタントだ) バウアーさんの問いかけに、男の人が気だるそうに答えた。 「I’m goi’ng ‘o go’ o Ga’wick Airwor’ for business ‘rip.」 (出張でガトウィック空港に行く途中だったんだよ) 「ガトウィック空港?」 先輩が日本語で口を挟んだ。 「Didn’ you Gawick?Are you Londoner?」 (知らねえのか?あんた地元の人間じゃねえだろ) 小馬鹿にしたように尋ねたウィルソンさんに、先輩は表情をかえなかった。 「By ‘he way, would I ‘ave a cup of wa’er?」 (ところで、水を一杯貰えないか?喉が渇いちまって) ペットボトルの水を飲みながら、ウィルソンさんはその場を後にした。 「なんなのあいつ。話し方もめちゃくちゃだし、初対面のくせに馴れ馴れしいし最悪じゃない!!」 「芸能関係の仕事をしてるって言ってましたね」 「同じ国じゃなくてせいせいしたわ。少なくとも一緒に仕事はしたくないタイプね」 憤慨するCHIKAさんをよそに、私は一人考え込む先輩の姿が気になった。 「残るは一人ですね」
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