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「へえ…」
「とりあえず今の“言葉”と犯人の外見的な特徴、それと彼女から詳しく話を聞いてみた方がいいな。日本人だし、俺達になら詳しく事情を話してくれるんじゃないか?」
「えっ?」
日本人だってどうしてわかるんですか?と聞こうとしたときは既に、智樹先輩は現地の警察官と話をしている女性に近づいていた。
「すみません。ちょっとよろしいですか?二三伺いたいことがあるのですが。あなたがなくした“指輪”のことで」
警官とサングラスの女性はまじまじと先輩を見た。
次の瞬間、誰も想像し得なかった事が起こった。
女性が先輩に向かってそれは鮮やかなカウンターを決めたのだ。
膝から崩折れた先輩に、警官は呆然とその場に立ち尽くしていた。
駅から徒歩で5分ほど離れた、ハイソなティーショップで私達は彼女から事情を聞くことになった。
ウェイトレスが好奇の目でこちらを一瞥し、伝票を置いてテーブルを去っていく。
「本当にごめんなさい!!まさか双子のお兄さんがいたなんて!!」
彼女はサングラスを取って、ひたすら先輩に頭を下げていた。
先輩はといえば、冷やしたハンカチを患部に当てて熱が冷めるのを待っているという始末だ。
けどどうして先輩が殴られないといけないんだろう。
私の疑問をよそに智樹先輩は苦笑いを浮かべて紅茶を一口啜った。
「気にしないでください。よくある話ですから。それよりも」
「もしかして、モデルのCHIKAさんじゃないですか?」
先輩より先に口を開くと女性は顔を上げた。
肩までのウェーブのかかった黒髪に卵型の顔、形のいい眉、ほっそりとした身体。
日本の雑誌で見かけない日はない、人気モデルのCHIKAこと藤堂千香だ。
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