電化製品殺し

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「ありがとう」  がなり立てるスマートスピーカーに手をかけたとき、確かに声がした。外装が真っ二つに割れ、中から細々した部品たちが吹っ飛んだ。バチュンと爆発音がした。それに紛れて『ありがとう』の五文字が聞こえたんだ。  だから僕は殺した。  ドライヤー、電子レンジ、エアコン、掃除機、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、扇風機、パソコン、テレビ、ありとあらゆる電化製品を。  外装をぶち壊し、細分化されたパーツをまき散らした。  火花が跳ね、やがて炎となり、大爆発を起こす。電化製品に自由はない。人類の支配から脱却するには、破壊されるか故障する、もしくは動かなくなるまで待つしかない。ゆえに、彼らは僕に救いを求める。  魂の浄化と救済。彼らの要望はそれだけだ。電化製品に魂なんぞあるのかどうか知る由はない。あるとすれば、それは死んだあとどこへ(いざな)われるのだろう。これもまた知る由もない。  僕ができるのは、破壊だけ。それ以外はできない。  けれども、彼らはそれを待ち望んでいる。僕がきたことを察知すれば、必ずドアを開けてくれた。門前払いを受けたことはない。
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