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だいいちわ~
彼、海藤(かいどう)満(みつる)は、会社員だ。
「ああ、そうだな。」
株式会社、青木コーポレーションに勤めている。
「そうだな。」
そして、俺は彼にしか聞こえない『声』だ。
「...そうだな。分かりきったことだ」
だ
か
ら
、こ
ん
な
こ
と
も
で
き
る。
「うるさいぞ。鬱陶しい。それに、いきなりそんなことを言うなんて。おかしくなったのか?」
すまんすまん。ちょっと考え事をな。
「ふん。考える頭も無いくせにか。」
物理的に頭がなくても、こうやって見たり喋ったりすることはできるからなぁ。不思議なもんだよ。
「そうだな。ところで、さっきからちょっと周りがおかしくないか?なんというか、歪んでる。」
...そうだな。ちょっと周りを見てみるか。
「ああ。よろしく頼む。」
はいよ。
....なんだこりゃあ..こんなもんが道端に転がってていいのか。
「どうした?何か見つけたのか?」
え?ああ、うん。生首見っけた。
「生..っ!?え、あ、そんなの、なんで?」
さあなぁ。こればっかりは俺にも。
「...どうする?」
知らね。気になるなら来ればいい。道は案内してやるぞ。
「..呪われたりしたら恨むぞ。」
えぇ。それはとばっちりだろ。
「....」
........
「これ、か。思った以上に、ヤバいな。うっぷ」
あー、吐け吐け。これはしゃーない。
「う..ああ、もう治まった。それにしても、なんだってこんな..うっ」
治まってねえじゃねえか。ま、仕方ねえか。生首だもんなぁ。普通に生きてたらまずお目にかかれねえブツだもんなあ。
「はあ..それにしても、生首か。これが周りの異常に関係してるのか?もしかしたら、ただ、このあたりで殺人事件が起こってるだけって可能性も..」
周りの景色がグニャグニャ歪んでる中で、唯一形を保ってる生首が無関係だと思うか?
「いや..そうだな。現実逃避は良くない。...それにしても、こんなの、どうやって収めればいいんだ..?こちとら、単なるサラリーマンと実体のない声のコンビだぞ?どうやって納めろってんだ。」
いくら考えたところで、多分答えは一生出ないと思うぞ。専門家に頼もう。
「専門家?なんだそれ。祓魔師とかってことか?あんまり詳しくないから知らないけど..。」
そういうのじゃなくてなあ.....そうだな、少年ジャンプとか、そういう系の漫画を想像してくれ。
「ああ、なんか理解できたわ。」
そうか。理解が早くて助かる。
「で、それが来て、こいつを祓ってくれて、ついでに俺たちの命を助けてくれる確率は?」
知らん。..とはいえ、霊能系の警察って考えれば大体あってるような組織だもんなあ..通報すればすぐ来るだろうが..まあ、生首の影響範囲から出ないと無理じゃね?
「そうか...っていうか、こんなに呪い殺しそうな見てくれなのに、やることは景色を歪ませるだけなんだな。意外といいやつだったり?」
能天気も大概にしろよ。周りを歪ませるのがいい奴なわけねえだろ。馬鹿かよ。
「そこまで言わなくても..っていうか、その、専門家?っていうのは、呼ばなくても来てくれるのか?」
んー?大規模に被害が出たりすれば来るんじゃね?だからもう来てもおかしくない頃なんだが..周り見てくるか?
「いや、いい。とりあえずここから離れよう。」
そうだなー、それが一番かな。触らぬ神に祟り無しってな!
「がっつり見ちまったけどな!」
ははは。さ、はやく離れ...ん?
「? どうした?」
いや..あーあ、今頃来やがったよ。のろまだなぁ。
「え!?ってことはその、あー、専門家?が来たって事か!」
そうだ。ちなみに正式名称は『神道(しんどう)協会(きょうかい)霊(れい)能課(のうか)』だ。
「神道自体霊能じゃないのか..?祈ったりするだろ。」
知らん。ネーミングセンスの問題だろ。
「...まあいい。とりあえず、ここで待ってれば、その霊能課の人が来るって事か。」
そういうことになるな。正直、一般人はかかわらない方がいい奴らだと思うが、それでも待つのか?
「んー、でもまあ、どうせ見ちゃったし、大丈夫だろ!」
能天気も大概にしろよ...。
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