最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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「私はあなたが何者かなどと無粋なことは尋ねません。帝国を、皇帝陛下を助ける為に力を貸してくれるのでしょうか?」  魔導師らが一瞬だけ気を取られる。団長が変なことを言い出すから。 「ええ、あたしには最早さしたる力もありませんが、それでも努力はします」  片膝をついて敬意を表し「宮廷魔導士団【アップグルント】団長ヴィーラントが感謝を申し上げます」頭を垂れた。そんなことをする必要もないのに、人臣位を極めている最高官の男が、どこの誰とも知らない少女に。 「失う辛さは深く知っているはずだったのに、我が子も同然の者の辛さを理解してあげることも出来なかったなんて。あたしもまだまだ未熟だったわ」  ドロシアは瞳を閉じて小さく息を吐く。言葉とは似つかわしくも無い見た目に異様さを感じる。 「召喚される魔物は魔力量に比例するでしょう。それをどのように撃退するか、準備を並行してすべきだと提言しておきましょう」  団長はすっと立ち上がると「帝都の全魔法兵団に緊急呼集をかけろ! 戦争が始まるぞ! 皇軍には帝都から臣民の一時避難を今すぐ行わせろ、急げ!」果断な命令を下す。 サルディニア帝国・帝都サルディア-5 ◇  深夜に起こされて集められた皇軍が、真っ暗闇の中でサルディアに放たれると、一つ一つの家を当たり半ば無理矢理に避難をするように追い立てた。当然住民は多大な不満を持った。簡単にその作業が終わるはずもなく、時間だけが過ぎ去っていく。
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