最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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 満月の深夜、ついに時が満ちた。帝都全体が淡く光り、巨大な魔法陣が空に浮かび上がる。多くの者が空を見上げて足を止めてしまう、それを注意して歩かせなければならない皇軍であってもつい見上げてしまった。 「へ、陛下が!」  ベッドで唸って寝ているアドラーから一気に魔力が消失する。苦しそうに呼吸を荒くするが、大司教の回復魔法も効果が無い。ドロシアは隣へ歩んでいきベッドに座るとその手を握った。 「心配するなあたしはここに居る。封印を破るのは自身だが、その手助けはしよう」  瞬間、多少だがアドラーの顔が安らぐ。部屋に魔導師が駆け込んで来る、その狼狽ぶりは指導者階級としては恥ずべき態度だった。だがそれを指摘するよりも早く「空に浮かぶ魔法陣から魔神が現れました!」大惨事の序章を告げる。 「魔神とは何が出た!」 「蛇です、巨大な黒い蛇が空中でとぐろを巻いています!」  そのような魔獣は居ない、ならばそれ以外だと認識するしかなかった。幻影ではなくそこに確実に存在している、現実を見るならばまさに魔神と呼んで差し支えない。 「黒い蛇? 一体どのような……」 「空飛ぶ巨人の子、大精霊、その見た目からミッドガルドの大蛇とも呼ばれているわ」  ドロシアに視線が集まる、これだけいる魔導師らが知らないことを語ったから。ヒントが得られるならば一秒でも早い方が良い、団長が詳細を尋ねた。 「そのミッドガルドの大蛇についてご教示願えないでしょうか」  遜って教えを乞う、団長に習いこの場の皆が膝をついて頭を垂れた。
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