最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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「その名をヨルムンガンド、蛇の化身は太古の昔にミョルニルの鎚で叩かれ現世を退いたと言われています」 「ミョルニルの鎚? すると打撃が有効だと?」  空に浮かんでいる相手に打撃とは厳しいが、効果的な攻撃が解ったならば値千金だと表情が明るくなる。が、頭を左右に振る。 「ミョルニルハンマーは雷を呼び起こす代名詞。ヨルムンガンドは雷撃で撃退することが出来るでしょう」 「ドロシア嬢に最上の感謝を申し上げる! すぐに【テンペスト】へ伝えよ集合魔法【グランツ・ブリッツシュラーク】を行う、各兵団は【テンペスト】へ魔力を供出せよと!」 「団長お待ちください。そのドロシア嬢の言葉を鵜呑みにして良いのでしょうか。ことは重大、ここで誤るわけには参りません」  そう思っていた魔導師も複数いた、そのせいで即座に反対も賛成も声が上がらない。どこの誰とも解らない、信用して帝国の多くを賭けるまでして良いものかどうか。 「私は一度彼女を信じると決めた。ならばどのようなことが起ころうともそれを貫く。私を信じるならば彼女も信じろ」  強い口調で団長が言い切ると、俯きながら「団長の事は信頼していますので――」小さく言うと納得した。強引であってもこの場を収めてしまえば後はどうとでもなる。 「ヴァーラント団長の本気を受け取ります。あたしも行きましょう」 サルディニア帝国・帝都サルディア-6 ◇  帝都の上空には大蛇が居て、そこから毒をまき散らしていた。異様な匂いを発していて、全てを腐食させる毒を。逃げ遅れた民が巻き込まれて、阿鼻叫喚の地獄絵図を見ているようだった。
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