最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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 城の望楼へと登り空を見上げる。街の四方では魔法兵団が待機していて魔法を構築し、魔力を充当させている。 「団長、準備があと少しで完了します」  魔導師らとやって来たドロシアもその目でヨルムンガンドを確かめた。力が弱いものならば見ただけで卒倒しそうな相手、なるほど魔神と言われるはずだ。 「これより戦略第一級攻城戦集合魔法を行う。総員構成を行え!」  六芒星をほうふつとさせる位置取りになる、中央に団長が立つと詠唱を始めた。周囲の魔導師らが魔法兵団が供出する魔力を集め【テンペスト】が構築した【グランツ・ブリッツシュラーク】の発動権限を団長が受け継ぐ。全ての魔導師がたった一つの魔法に集中している、その時、ヨルムンガンドが望楼に立っている無防備な魔導師らに毒の雨粒を高速でぶつけた。 「ΛБЖΦデヴィエーション」  ドロシアが小さく呟くと、毒の雨粒が望楼を避けて後方の離宮へと降り注ぐ。建物を腐食させて崩れ落ちる。医務室は本宮にあるので偶然ではない。打ち消すでも、防ぐでもない、軌道を少しだけずらす。極めて高度な魔法操作能力と、僅かな魔力が必要とされる神業の一つ。 「汝が子が聖マリーベルヘ願い奉る。祖たる女神の子らが末路わぬ神に虐げられることを憂い給え。ゴデッスパラデュース」  陽も登らない未明、帝都サルディアに眩い光が降り注ぐ。巨大な禁呪の魔法陣よりも更に大きなホーリーサークルが出現。一帯を真っ白な輝きで照らした。サルディニア帝国の国教であるマリベリトフター教の神ではなく、その祖となる聖マリーベル教の女神の奇跡。
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