8人が本棚に入れています
本棚に追加
マリベリトフターとは、マリーベルの娘という意味で、現世の子らにとっては祖母のような存在と言えるだろうか。
「閃光よ彼の敵を打ち滅ぼせ! グランツ・ブリッツシュラーク!」
天から鋭い雷が降り注ぐと、それら全てがヨルムンガンドへ向かう。神の雷、雷神の千槍と呼称される集合魔法が多くの魔力を乗せてさく裂した。焦げる匂いが漂う、突き刺さった地上は建物が吹き飛んで大地が焦げ付いていた。
「GUェァァア!!!」
この世の叫びとは思えない断末魔、その身を焦がし呪詛をまき散らしてヨルムンガンドが散り散りになる。女神の楽園が帝都を覆っている、そのお陰で死の大地にならずに済んだ。朝日が差し込んで来ると、帝都の臣民は皆がひれ伏して神に感謝をささげた。それがマリベリトフターであろうと、マリーベルであろうと女神はただ微笑むのみ。
ドロシアは黙って望楼を降りると医務室へと戻る。そしてベッドの横に座ってアドラーの手を握った。誰一人邪魔する者は居なかった、そして丸々二日の後についにアドラーは目を覚ます。
サルディニア帝国・帝都サルディア-7
◇
水やタオルを取り換える為に侍医がやって来た時、アドラーが目を覚ました。すぐさま控室に戻るとそれを報せる。筆頭侍医に大司教、そして団長らが医務室へやって来た。彼らがそこで見たものは、泣いてドロシアに抱き着いてる皇帝の姿だった。
あまりにも想像から外れてしまう光景に声が出ない。
「暗闇の中であなたの声が聞こえました。あなたの存在だけが感じられました」
「あたしなど居なくても、お前は一人で上手くしていたでしょう」
最初のコメントを投稿しよう!