8人が本棚に入れています
本棚に追加
「百歳も若いのに求婚されるとは思わなかったわ。……まあいいわ。でも面倒だから転生のことは秘密よ?」
大きなため息をついて諦めることにした。憑依したドロシアには悪いけれども、本気には本気で応じることにしていたカタリナはアドラーの求婚を認めてしまう。
「うむ! 今この瞬間よりカタリナの名は口に出すことを厳禁とする。これに背いたものは即刻族滅する。これは皇帝の最優先命令だ!」
全員が恭しく言葉を受け入れる、さも当然であるかのように。
「――新しい人生だもの、それもいいか――」
微かに隣に聞こえるかどうかの小さな声。アドラーも聞き違いかと思えるほどの囁き。それから数十年、サルディニア帝国は最大の繁栄を見せた。公には一切現れない皇后の存在、幻ではないかとすら言われ続ける。
それでも嬉しそうに語るアドラーを見た者は疑うことをやめた。失ってから気づく大切さ、彼は生涯を添い遂げることになる。
最初のコメントを投稿しよう!