最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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皇帝アドラー ◇  城では下心丸出しの奴らばかりでつまらん。雑多な酒場に居る方が万倍ましだ。 「はいにーさん、エールだよ!」  幻術で顔を変えているので誰一人気づきゃしない、宮じゃ魔導師たちが変な顔をするけどな。魔法を使っていて自分たち宮廷魔導士団の一員でなければ俺だって消去法だ。  安っぽい味がするエール、これでも心が満足するんだよ。俺の趣味じゃない、けれどもあの人のことが浮かぶから。 「……カタリナ」  何度目だろうか、ここに来てこう呟いて何年も経つ。いつまでたっても未練を断ち切れないような弱い男じゃないだろアドラー! こんな皇帝は願い下げだって、誰かが立ち向かって来れば相手をしてやるってのに、どいつもこいつもヘラヘラしたり俯くだけで挑戦すらしてこねぇ。  何がサルディニア帝国だよ、こんな国だけ残ってどうしろってんだ。  ガタン!  ジョッキをテーブルに叩きつけるようにして、反対の手で頭を押さえる。なんだこれは! 魔法か? いやレジストはしてない、魔法防御を抜かれてないぞ。だが異常がある、神聖魔法か?  神の奇跡は絶大だ、この俺だってどうにもできないことがある。だが一人を狙って何かをするようなものはないはずだ、誰の仕業だこれは。酒場を見回すがこれといって気になる姿はない。  セルフチェックで魔力の低減が激しい警告がある、どうなってる? 魔石を潰して補充をすると少しだけ頭痛が和らぐ、それでも変わらずに減り続けているな。場所を変えよう、ここは危険だ。 「勘定はここに置くぞ」
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