最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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 適当に銀貨を数枚載せて置いて外に出る。後をつけられている感じはないが、これはどういうことだ魔力が物凄い勢いで失われていく。もう一つ魔石を潰したが長くは持たんぞ。城まで転移するか。 「――妨害魔法か!」  転移を阻害する結界が施されているようで、ここから抜け出すことが出来ない。それらしい姿はどこにも見えない、これはかなり周到に計画されたものだ!  テレパスも阻害されてる、これでは魔導士団と通信も出来ん。俺がすべきはここを全速力で離れることだ。往来の馬車を引いている馬の馬具を問答無用で破壊し、背に跨ると腹を蹴る。 「う、馬泥棒!」  御者が叫ぶが完全に無視して市中を騎乗で駆け抜けようとした。もう魔石は無い、体力を魔力に変換して気絶は避けねば。鞍が無くても何とか振り落とされることはないが、城につくまで魔力が持つかは微妙だぞ。  正門が見える位置まで来ると意識がもうろうとして来た。これ以上体力を変換するわけにもいかない、ここまでか。最後に見たのは、馬のたてがみに突っ伏すところだったな。 令嬢ドロシア ◇  今の感覚は。喫茶店で紅茶を傾けていたのに、まさか禁呪にお目にかかるなんてね。あたしから魔力を引っ張るだなんて大したものよ。でもまあ今のあたしじゃ仕方ないけれど。  それにしてもこの帝都サルディア全体を覆うような禁呪、構築するまでに五年は掛かるわよ。よくもまあ気づかれずにやったって褒めてあげたいわ。それにしてもこの魔力、アドラーにぶつけるためのものなのね。さすがのあの子だって、帝都全体の人間を相手にしたら魔力切れを起こすわ。
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