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「ふふ、あの子って、今はもう立派になっているでしょうに。二十五歳よね、早く皇妃の一人もとればいいのに」
窓ガラスに映る顔がどうにも見慣れない。何せこの方百年以上も付き合ってきた顔と違うから。死んだって思ってたけど、どうして転生なんてしたのかしらね。死んだのは死んだから転生なんだけど。
この身体の自我も残ってたし、憑依の方が正しいのかな。あたしだって初めてのことだからもう五年も様子見をしているけれど、これといって拒絶反応もないしどうなのかなってね。ドロシアってことでいいんだけれど、カタリナって呼ばれたら未だに反応しそうになるわ。
それにしても魔力が弱い身体になったものだわ、これじゃあファイアボールの一つも放ったらおしまいよ。使うような場面はこの五年間一度も無かったんだけど、魔法は今まで通り行使出来るはずよ。試さなくてもあれだけずっと付き合ってきたんですもの。
「さて、この禁呪を使ったということは何かが起こるわけね。行きますかお城に」
あたしの可愛い生徒を的にしたのは誰かしらね。この格好じゃ気分が出ないわ、出来るかしらアレが。でも魔力の質は一緒のはず。
「インスタント・イクイップメント」
ふわふわしたワンピースにハイヒール、そこに水色の外套が突如現れる。うん、大丈夫みたい。禁呪内じゃ転移も出来ないし、お城までそこそこ歩くわね、仕方ないけど。まあすぐに何か起きることも無いでしょう、夜が明けて騒乱が広まる前によ。仕掛けるにしてもきっと満月の夜、魔力が最大に強くなる深夜三時よ。
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