最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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 そんな時間にドロシアが歩き回るのは良くないんだけれど、どうしようかしら。フェート・フィアダの霧で姿を隠すのが丁度良いかな。夜霧か、ちょっと洒落てる響きよね。 サルディニア帝国・帝都サルディア-1 ◇  日付が変わってからも、宮廷魔導士団【アップグルント】は皇帝アドラーの傍で必死の治療を継続していた。突然馬の上で気絶した皇帝が戻って来て、大慌てで医務室へ担ぎ込まれたから。筆頭侍医の診察では身体には一切の異変が無いと診断された、そこから宮廷魔導師が容体を確かめると魔力切れを起こしているのを見つける。  この宮廷どころか、世界でも最高峰の魔力を持っているアドラー皇帝が何をどうしたらそんな状態になるのか誰もが不思議に思っていた。魔力移譲の魔法を使い一安心していたところが、次々に失われていく魔力に驚愕した。減るからと放置するわけにはいかず、交代で引っ切り無しに魔力を補充し続けている。これはこれで弊害がありそうな気がするが、今はそれ以外に方法はない。 「団長、これでは陛下が疲弊します。どうすれば?」  宮廷魔導士団は上級魔導師しか所属を許されない、それなのに誰一人として原因に気づけずに狼狽する。これが帝国最高の頭脳とはあきれてものも言えない、いつもなら団長がそう切り捨てるのに、今回は自身も不明だったので小さく唸るしかなかった。 「何かの呪詛の可能性もある、ディスペルだけでなくリムーヴカースも必要かもしれん。大司教に連絡を入れて朝一番、いや直ぐに登城するように要請をするんだ」
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