最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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「さてさてどうしましょうね」  左手で右手の肘を抱くようにして、頬に手を置いて悩む。手立てなど幾らでも思いつくけれども、どうしたら一番楽に達成できるかを選んでいると、馬の嘶きが耳に入った。車輪の音が一緒に聞こえるので馬車だというのが解る、この時間に走らせる馬車に誰が乗っているのか。  一つの答えとしては皇帝の側が呼んだ人物と言うことだ、何せ外からやってきたものが取次を願うには時間が悪すぎる。夜霧で姿を隠ぺいしたままドロシアは門番の傍まで歩み寄る。そこへ馬車がやって来た。 「何者だ!」  ハルバードと呼ばれる斧槍を交差させて行く手を阻み誰何する。 「皇帝陛下の召喚により参上しました、大司教のエルツで御座います」 「大司教猊下! 開門致します、どうぞお通り下さい!」  道を譲ると城門が左右に開いてそこを馬車が通った。と同時に、誰にも知られずに女性も徒歩で門を潜る。重い音を響かせて再度城門が動いて固く閉ざされる。馬車は前庭に停められて、中から老人が降りて来る。マリベリトフター教の大司教エルツは白と青の法衣を纏っていて、ゆっくりと歩みを進めた。  騎士に先導を受けて医務室へやって来る、宮廷魔導士団が扉の側を向いて大司教らに一礼する。 「猊下、急なお呼び立て申し訳ございません」  片手を軽く上げて「陛下のお呼びとあらば来ぬわけにもいきません。堅いことはなしにして、何があったかを聞いても良いかな」椅子を勧められたのでエルツが膝をさすりながら腰を下ろした。ここで座っているのは団長と大司教だけ、残りは起立して控えている。
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