最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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 奥のベッドに皇帝が寝ているのを見て異常を悟るが、まずは話を聞くことにした。 「実は陛下が魔力流出を起こしておられて。解呪も効かないので呪いにでも掛けられているのかと。それと――結界魔法の可能性もあるので、現在調査中です」 「呪いですか。まずは見せて頂いても?」 「どうぞ」  ベッドの隣まで歩み寄るとアドラーの顔を覗き込む、今は辛そうな表情はしていない。定期で魔力を補充し続けているから。手を取って目を閉じると、心を落ち着かせて祈りを捧げる。大司教は神と通じることが出来る偉大な人物だ、邪悪な存在が身に宿っていれば見つけるのは容易い。 「良いのか悪いのか、呪詛の類では御座いませんな」 「ではやはり結界の類……」  そうなれば非常に強力で厄介な魔法陣が見つかるだろうと予測をする。違えば迷宮に迷い込むような話になり、アドラーの命も危なくなる。椅子に戻って座りなおす。一息ついて大司教が「お嬢さんにも椅子を用意しては?」部屋に居るうちで唯一の女性を見てそう言った。  多大な違和感、魔導士団が変な表情になった。それは団長も同じだった、何せ大司教と共にやって来たのに見知らぬ相手へ向けるかのような言葉。何かの符牒かとすら考えてしまう。ひらひらのワンピースに水色の外套、大司教の世話係だろうと信じていたから。 サルディニア帝国・帝都サルディア-3  何はともあれ椅子を用意させて、着席を確認すると団長が口を開く。 「レディ、あなたは?」
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