最愛の人を失ってから十年経って気づく真実

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 その一言で大司教も、おや? といった感じを醸し出した。この場に居るのに誰一人知らないとはどういうことか。かといって警戒するにしてはあまりに見た目が。銀色にうっすらと青みかかった長い髪、黄緑のリボンを後ろに結わえていて、年の頃は十代半ば、これといった危険は一切感じれない。 「初めましてにしておこうかしら、ドロシアです」  それ以上は語らずに、微笑を浮かべているものだから扱いに困る。無関係な人物がここに居てよいはずがない、そもそもそういう者が近づけるはずがないのにどうして。何とも言えない微妙な空気のところへ、魔導師が一人やって来た。 「帝都を覆う巨大な魔法陣が発見されました。これほどの規模は見たことがありません」 「やはり結界魔法だったか」  渋い顔をする団長。これを壊せば恐らくは皇帝に作用しているだろう効果は消える、問題はどうやって壊すかだった。無効化させるにも幾つも手段があった、そのもっとも下策と言われているのが魔力をぶつけて破壊する行為。これをするとどんな副作用が起こるか分かったものではない。 「リバーススペルを行うには時間が掛かりますが」  魔導師の一人が注意を与える。言われずとも知っていると怒鳴り返すようなことはしなかった。 「陛下に悪影響が出ないように速やかに解決すべきだ。この際、多少帝都で被害が出てもやむを得まい」  帝国は専制政治が行われている、皇帝と都のどちらが大切かと問われたら皇帝と答えるべきだ。団長がそんなことを役目で言っているわけではない。若き皇帝にはまだ後継ぎが居ない、ここで崩御されたら帝国が混乱を起こして消え去る可能性すらあった。
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