ありがとうの約束

1/3
前へ
/3ページ
次へ
  お昼前の人気の少ない駅構内。それをいいことにスマホを使いながら歩いていると、背後で誰かが駆ける音が聞こえた。  心なしかそれはわたしに向かっているように聞こえる。振り返るとおばあさんが、わたしに何かをみせるように左手を掲げながら走っていた。  反対の手には小さな男の子を連れている。祖母と孫の関係だろうか。  戸惑いつつも足を止め、おばあさんが掲げるものに目を凝らしたわたしは、 「あっ!」と思った。 「これあなたのでしょう?さっき落としていたわよ」  軽く息を弾ませているおばあさんが差し出したのは白いハンカチ。確かにわたしのものだった。スマホを取り出した時に落としてしまったのだろう。 「あっ!すいません」  小さくそう言って、ハンカチを受け取ろうとしたその時、意外な方向からの声を聞いた。 「どーして?」 声の主は、おばあさんに手を繋がれた小さな少年だった。  
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加