0人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしが戸惑っていると、おばあさんがわたしの心中を代弁してくれた。
「タカくん。なにがどーしてなの?」
タカシなのか、タカヒロなのか、はたまたなのかはわからないけれど、少年はタカくんと呼ばれているようだ。
「だってー、すいませんって、ごめんなさいってことでしょ?ぼくとおばーちゃん、おねーちゃんになにもわるいことされてないよー?」
わたしは咄嗟に何か言おうとした。けれど、何にも出なかった。
確かに何で「すいません」だったんだろう。わたくしめなぞの為に貴方様のお手を煩わせてしまい――まさか。わたしはそこまで卑屈でも謙虚でも殊勝でもない。
「じゃあ、タカくんは何て言うのが良いと思う?」
黙しているわたしに頓着せずに、おばあさんがタカくんに聞いていた。すると満面の笑みを浮かべて答えた。
「ありがとうだよ!ありがとうっていわれるとボクはうれしいもん!」
まるで、いま正にそう言われたかのように大きく手を広げ、喜びを表している。そんな世界一幸せそうな様子を見て、わたしは思わず吹きだす。そして、目が合ったおばあさんと笑いあった。
「そうだね。ありがとうの方がいいね」
わたしがそう言うと、タカくんは元気な返事を返してくれた。そしておばあさんに向き直って改めてお礼を告げ、辞去しようとしたその時、慌てた様子のおばあさんに呼び止められた。
最初のコメントを投稿しよう!