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お昼前の人気の少ない駅構内。それをいいことにスマホを使いながら歩いていると、背後で誰かが駆ける音が聞こえた。
心なしかそれはわたしに向かっているように聞こえる。振り返るとおばあさんが、わたしに何かをみせるように左手を掲げながら走っていた。
反対の手には小さな男の子を連れている。祖母と孫の関係だろうか。
戸惑いつつも足を止め、おばあさんが掲げるものに目を凝らしたわたしは、
「あっ!」と思った。
「これあなたのでしょう?さっき落としていたわよ」
軽く息を弾ませているおばあさんが差し出したのは白いハンカチ。確かにわたしのものだった。スマホを取り出した時に落としてしまったのだろう。
「あっ!すいません」
小さくそう言って、ハンカチを受け取ろうとしたその時、意外な方向からの声を聞いた。
「どーして?」
声の主は、おばあさんに手を繋がれた小さな少年だった。
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