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魔女信仰
世界に広がる、「魔法」の力。その力は、人類に等しくも偏りのある形で、広まっていきました。
そして、その力を広まる以前から持ち、しかも最も強く持つ私を、人々は神格化していきました。
見覚えのある顔が見える。私をつい最近まで見下し、虐げ、ゴミのように扱ってきた者達が、私を崇め、気に入られようとし、美辞麗句を並べる。
私は、強い苛立ちを覚えました。そして、落胆しました。
彼らは変わった。けれど、心は変わっていない。結局、自分の立場が良ければ、それで満足なのです。身勝手の極みです。
何よりも、愛よりも、権力だとか、そういったものが人を変えるということを痛感させられたのが、何よりも苛立たしい。
だんだんと、私の心は空虚になっていきました。愛を与えることくらいしか、私には特技がないのに。愛することでしか、自己表現ができないのに。
私に寄って来るのは、ただ愛ではなく力を求めた、そんな者ばかり。私の言葉に、意味はない。
そして、そればかりか自由もきかなくなってしまいました。その気になればこの状況から脱することもできたでしょうが、やったところで、その自由は自由の体をなさない。
このまま、私は空虚に、人より長い命を無駄に過ごすのかと、絶望すら感じ始めていました。
直接私に害をなした者達が死ぬのは見ていて、なぜか心地よさすら感じていました。しかしそれも一瞬のこと。また別の者達が、私に意味もなくへつらい、愛を受け取る意思を見せずにただ足にしがみつくのみ。
こんな世界で、到底幸せになどなれません。彼女の考えは正しいと、そう思っていました。
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