恥知らずの天使

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恥知らずの天使

 胸が痛い。胸に穴が開く。胸を貫く。  それは、物理的な感覚。私は、何かに刺されていました。そして、それが何なのか、私にはすぐに察することができました。  彼の体からは、無数の赤い棘。そのうちの大きな一本が、私の胸にも至っていました。それらの棘は一点から放射状に散らばるように伸びていました。そして、その色から、すぐに分かります。  この棘は、彼の心臓の中にある血を、魔法で変質させたものなのです。そして、彼の皮膚も破れていることを見るに、血液にしか魔法は使っていない。  となると、ここから恐ろしい事実が導き出されます。彼は、自らの心臓を、突き破っている。  否、丁度彼の心情を表すかのように、彼の心臓はのです。それを全て一瞬で察してしまったことに、私は絶望するしかありませんでした。 「さあ、一緒に……」  彼はこう言って、それから動かなくなりました。魔法は解け、棘はやはり血であったということを再確認します。  魔女は、人間には殺せない。私の胸をしっかりと貫いても、空いた穴は、再生していくのです。心臓が張り裂けたとて、戻るのです。  同じようにして、救われることができたら、どんなに楽だったか。  それから丸一日、私は絶叫していたようです。しかし、そんなことは覚えていません。  ただ、それからは、ずっと一人で、考え事をしていました。
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