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幸せって、何?
私はもう、信じるものを失いました。何も残っていません。何も。幸せすらも、失う恐怖に襲われて、それに抗うこともできないでいる。
「でも、間違いなく幸せだっただろう? あいつと過ごした日々は」
そう、ですね。確かに幸せでした。あれが幸せだったことは、紛れもない事実です。
ですが、その幸せも壊れてしまいました。壊れて、ついには、また幸せになる意思、それすらも壊れてしまい……私は、何もできなくなりました。
「それだ。だから幸せが壊れて、苦しい思いをしなくていい世界を作る。私達は、そう誓ったじゃないか」
そんなこともありました。お互い、辛い思いをして生きてきた者同士でしたし。ただ、それだから救われたこともありましたね。
「お前のその愛というものが負けるほどに、お前の境遇は過酷だ。私の境遇も、ややもすれば可愛く見えかねないほどに。やはり、私達は呪われている」
さあ、これも案外、呪いでもないかもしれませんがね。でもやっぱり、思ってしまいますよね。こんな世界、何なんだって。
「だからこそ、縋るんだ。理想に。けれど、その理想とは違った、別のものに救われたりするんだ。それこそ、意外すぎるところから。あいつだって、その一人だったはずだ」
そうですね。
あなたにとって、私も、そうであってほしい。
「さあ、私は救われているのかね……自分では、もはや分からない。お前とは違って、幸せの形を実感の上で理解はしていないからな」
私だって。
何も、感じられませんよ。
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