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◆
母さん、母さん。花言葉がないのはおかしいことなの?
僕はみんなとはちがうの……?
いつも泣いていた。花言葉を持たないせいで、心無い言葉をたくさん吐かれて――まだ母さんがいてくれた頃の、蛍火のような記憶。
花人は種から生まれた姿のまま、変わることはない。僕は永遠に少年の姿のまま――成長することはない。それが不幸せなことなのか、それすらもわからない。
すべて始まりから決まったことだから。
だから、誰もおかしいとは思わない。
雪のように真っ白で、サラサラの長い髪の女性だった。桜色の唇から紡がれる優しい言葉と歌が、今も鮮明に焼きついている。
『人と違うのはそんなにいけないこと?』
ただ泣くだけの僕にそう問いかけた。
『花人は花言葉を忘れない、いえ忘れられないの。ねぇルカ、忘れてることだって悪いことじゃないの。あなたの世界を、言葉を、探しにいくことだってできる。きっといつか想い出すでしょうそれが必要なことなら。
何かをすること、あきらめないで。
母さんはいつでもルカの味方』
心に降る雨は止んでくれそうにない。
母さん……。
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